研究活動とキャリア志向性に関する調査(本報告)

博士人材総研は本日、探求プロジェクト報告「博士課程学生の研究活動とキャリア志向 ― 分野別多様性に関する実証的検討 ―」を公表いたしました。本報告は、博士課程学生 206名を対象に研究活動の実態とキャリア志向を実証的に検討したものであり、「博士人材のキャリア志向は分野によって大きく異なる」という核所見を提示しています。「博士人材」という一括カテゴリを前提とした政策・採用議論を、分野別の実態に照らして再検証するというアイディアの参考資料としていただけますと幸いです。

調査・分析結果(サマリー)


主な発見

  • 企業(専門応用型)が第一希望の過半数(50.5%)を占める一方、理学(数物情系:数学・物理学・情報科学系)のみは「専門転換型」が最多(42.9%)。分野間の差は Fisher の正確確率検定で統計的に有意(OR=2.82, p=0.005)であり、95%信頼区間も化学・生物・工学と重なりません。

  • アカデミアを第一希望とする学生は 13.1% にとどまるが、アカデミアへの興味度が高い学生(5段階で4以上)は 49.0% に達する。本稿では、このうち第一希望としてアカデミアを選んでいない 35.9%(n=74) を「潜在的志望層」と定義し、第一希望のみを観察する従来分析の死角を指摘しました。

  • 潜在的志望層を規定する要因として点推定値の上で正の関連が観察されたのは、指導教員のキャリアサポート(OR=1.75, p=0.024)です。ただしモデル全体の尤度比検定は有意水準には達しておらず(LLR p=0.094)、確定的な規定要因の特定には独立サンプルでの追検証が必要です。

  • 博士課程の「未決定」(n=14, 6.8%)は「複数選択肢への葛藤」ではなく「キャリア全般への関心の薄さ」と関連する傾向が示唆されました。複数キャリアに迷う「葛藤型」(全体の54.6%)の未決定率は 0.0% にとどまる一方、「均等低関心型」(6.3%)の未決定率は 38.5% に達します。

政策・実務への含意

 本調査の結果は、第一に、博士人材政策を「博士人材一括」から「分野別アプローチ」へと転換する必要性を示します。第二に、データに基づく規定要因として観察された指導教員によるキャリア対話の機会の確保を第一の方向性として位置づけ、それを補完する仕組みとして専任キャリアコーディネーター体制の検討が選択肢となります。第三に、数物情系博士課程学生の転換型志向に対するロールモデル周知・インターンシップ等の接続支援は、博士人材の活躍領域を実体的に拡大する上で重要な実践課題です。

本調査の特性と独自性

 本調査のサンプリング枠は就職情報サービス『アカリク』登録者であり、博士課程学生全体の代表性は持ちません。一方でこの特性は、転換型キャリアへ向けて動いている数物情系博士をはじめとする「就職市場を主体的に活用している博士人材層」を捕捉できるという独自の強みでもあります。本報告は、この限定範囲内で観察される分野別多様性と潜在的志望層の存在を起点に、後続の追跡調査・インタビュー調査を組み合わせた検証を提言しています。

調査概要

  • 調査名: 博士課程学生の研究活動・キャリア志向性調査

  • 調査主体: 博士人材総研(株式会社アカリク内)

  • 対象: 博士課程学生(一般/社会人/留学生を含む。就職情報サイト『アカリク』登録者)

  • サンプル: n=206(有効回答、調査票全15問について欠損ゼロ)

  • 調査期間: 2026年1月29日〜2月16日

  • 方法: Web 調査


レポート・参考資料の閲覧・ダウンロード

掲載資料

  • 報告書 本体(PDF)

  • 調査票(PDF)

  • 別冊付録(分析変数の定義・統計サマリ・感度分析)(PDF)

資料DL用ページよりご覧ください。(こちら)

著者・お問い合わせ

  • 著者: 鬼頭 祐介(博士人材総研,株式会社アカリク ヒューマンキャピタル事業本部 事業推進グループ)

  • お問い合わせ先: 博士人材総研 事務局(hakushi-soken@acaric.co.jp

 

調査後の報告は以上です。資料の追加等の際にはお知らせします。

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