研究活動とキャリア志向性に関する調査(一次報告)

博士課程学生を対象とした「研究活動とキャリア志向性に関する調査」の調査概要についてお知らせします。本報告は一次報告として調査概要について説明します。

調査の概要と主要な結果(サマリー)


調査目的

 一定の専門性を持ちつつも基礎能力を備えた大学院生ではあるが、研究領域ごとに活動実態や研究を通じた実社会との関わり方は差があり、その積み重ねがキャリア観にも影響を与えていることは想定できる。博士課程を経た人材は「博士人材」と一括りに扱われることもあるが、実態としてどう違うのか・逆に同じ特性を持ちうるのかを理解するために、本調査では博士課程学生の研究活動の実態およびキャリア志向性に関する考え方を広く収集し、博士課程学生の志向性の研究領域ごとのバラツキを記述することを目的としている。研究領域ごとの相違やキャリア形成における特有のニーズを可視化することは、民間企業や公的機関の採用・組織開発担当者、政策立案者、キャリア支援に関わるコーディネーター、そして人材政策研究者といった多様なステークホルダーが博士人材の実態をより正確に把握し、実効性の高い博士人材関連施策を推進するための一助となることを狙いとする。

調査方法

就職情報サイト『アカリク』に登録している博士課程学生に対するアンケート調査(オンライン)

調査期間:2026年1月29日~2026年2月16日

主な事実発見(一次報告)

  • 研究時間の極端な二極化: 物理・化学・生物系では「週50〜80時間以上」の拘束が常態化している一方、工学や社会系では比較的フレックスな活動傾向が見られる。

  • 専門分野による企業就職の志向性の差: 全体として「企業(専門応用型)」が最も多く選ばれているが、分野によって「企業(専門転換型)」への適応意欲に大きな差が見られる。

  • 所属部局による「外部接続性」の格差: 工学系は民間企業との連携が活発だが、理学(数学・物理等)や基礎生物系では依然として「民間との交流なし」との回答が目立つ。

各設問の回答傾向に対する考察


① 研究分野別:キャリアパスの志向性

  • 生物・薬学・医学系: 専門性を直接活かす「企業(専門応用型)」への関心が極めて高く、製薬・バイオ業界への明確なキャリアイメージを持っている。

  • 物理・天文学・地球惑星科学系: 「企業(専門転換型)」への高い志向性があり、自身の専門知識そのものよりも、データ解析や論理的思考力を武器にコンサルタントやデータサイエンティストを目指す層が厚い傾向にある。

  • 数学(代数・幾何・解析): アカデミア志向が根強い一方で、「公務・非営利」を第一希望に挙げる回答者もおり、他分野と比較して進路が多様化している。

② 研究活動時間と拘束の実態

  • 分野による高い強度の研究活動: 「週7日で80時間を研究活動に費やす」と回答する学生もおり、基礎科学分野における研究の活動強度の高さが伺える。

  • 実験系のマシンタイム拘束: 高分子や分析化学分野では、実験装置の稼働に合わせた「週6〜7日、1日8時間以上」の拘束が見られ、他分野に比べると計画的なキャリア形成においては一定の障壁となる可能性が示唆される。

  • フレックスな研究活動: 航空宇宙やロボティクス分野では「完全にフレックス」「コアタイムなし」との回答が多く、研究と外部活動の両立が比較的容易な環境にある。

③ 指導教員のサポートと外部交流

  • 工学・情報系の優位性: 民間企業との共同研究やセミナーに「積極的」であるとの回答が集中しており、日常的に企業と接点を持つエコシステムが構築されている。

  • 理学・基礎生物系の孤立: 相談すればアドバイスはもらえるものの、「就職活動には干渉しない」「企業との交流はない」という回答が多く、キャリア形成において学生が自力で情報を探さなければならない状況がある。

自由記述(具体的な活動内容)から読み取れる生の声と課題


回答データの「研究活動に従事する時間」や「指導教員のサポート」の記述欄から、以下の生の声と課題が抽出された。

  • 「就職活動自体が制限される」という危機感: 生物系や物性物理系の学生の一部から「就職活動自体が制限される」との回答があり、研究活動の優先順位が極めて高く、キャリア開発のための時間を捻出することへの心理的・物理的ハードルの高さが窺える。

  • 「実社会との関わり」に対する認識のズレ: 「社会実装からは遠いが学会で注目されることを目指す」という回答が理学系に多い一方で、工学系では「論文引用を通じて産業界で利用される」といった、研究の出口に対する具体的かつポジティブな認識を持っており、産業界での活躍イメージの形成に差ができる要因となることが伺える。

  • アドバイスの「質」への課題: 多くの学生が「相談すればアドバイスをもらえる」としているが、その多くが「就職先の紹介」までは至っておらず、教員の持つネットワークがアカデミアに偏っている可能性も想定される。

関連データ

 

調査後の速報(一次報告)は以上です。考察の詳細、調査データの公開については次回以降の報告にて順次記載いたします。

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博士人材総研の設立について